おひさしぶりです。
マニアックな時計担当アイバです。
世の中には色々なタイプの時計好きの方がいらっしゃると思いますが、
一分野に「ダブルネーム」というものがございます。
例えばロレックスとティファニーのダブルネームが有名どころですね。
このダブルネームはあまりにも人気が高くニセモノが多いのでも知られています。
その他にもスイスの名門時計店「ギュベリン」とパテックのダブルネームとか、
ヴェンペとパテックの記念モデルなど色々ありますが、
最近でも当店で出したティファニーとパテックのダブルネーム「ノーチラス 5712」が
瞬殺で売れてしまうくらい安定した人気がある分野です。
これはメーカーとお店のダブルネームですが、もう一つ個人が注文して作らせるダブルネームがあります。
今回紹介するのはこちら。
一見ただのヴァシュロンのポケットウォッチですが、
良く見ると裏蓋に刻印が有ります。
菊の御紋ですね。
付属の箱には昭和三年に台中事変に関し邦彦王殿下より所賜されたとの記載。
文献やネットで調べたところ、久邇宮邦彦王殿下は今上天皇の母方の祖父。
つまり昭和天皇の皇后の父にあたります。
台中事変とは、現在では台中不敬事件と呼ばれ、
台湾を訪問中であった久邇宮邦彦王殿下が台中を巡視している道中、
短刀を投げつけられて暗殺が謀られた事件。
幸い短刀は久邇宮邦彦王に当たらず暗殺は失敗し、犯人ははその場で取り押さえられました。
真偽は分りませんが、戦前に金のヴァシュロンの時計を恩賜されたならば、
相当な功績が無い限り考えられませんので、いただいた方は台中不敬事件で重大な活躍をなされたのでしょう。
店頭に出すにあたり、色々調べましたが、本物かどうかの証拠は見つけることができませんでした。
しかし、箱に金の鎖は供出したと書かかれてあるなど、信用度は高いと思います。
ある意味この世に二本は無い歴史的な時計ですので、
是非、実物を店頭にてご覧下さいませ。